ハッピーシャワータイムの2023年12月の歌は、「冬景色」です。
「冬景色」
作詞者、作曲者不詳。
文部省唱歌
大正二年に発表された曲です。
随分前です。歌詞の言葉が難しいですね。
子供の頃音楽の授業で歌った記憶があります。
でもその頃は好きな曲ではありませんでした。歌詞の意味がよく分からなかったからだと思います。
私は勝手に「難しい曲」そんなレッテルを貼ってしまったようです。
大人になって紐解いてみると、素敵な光景が浮かび上がってきて、この曲のイメージが一変しました。
さぁ、皆さんも歌詞の意味を深めてご自分なりの映像を思い浮かべてみませんか?
1. さ霧消ゆる 湊江の
舟に白し 朝の霜
ただ水鳥の 声はして
いまだ覚めず 岸の家
1番は朝の光景です。
「霧」は秋の季語。「さ霧消ゆる」で
秋は終わりましたと、伝えています。
なので、この曲の季節は秋の終わりを告げたころ、初冬ですね。
「冬景色」の題名から感じるどっぷりとした冬では無いようです。
「さ霧の」「さ」の意味をよく聞かれますが、語調を整える接頭語だとお話ししています。
霧が消えて港の入江が見えてくるとそこには舟に白い霜がおりている。
そして水鳥の声だけがしている静かな朝です。
しかも、まだ岸辺の家の方々、誰も起きていない時間なのでしょう。
水鳥の鳴き声が静かに響いている様子や、鼻にツンと冷たい空気が入って来るような凛とした空気が流れているそんな気がします。
2. 烏啼きて 木に高く
人は畑に 麦を踏む
げに小春日の のどけしや
かえり咲きの 花も見ゆ
2番は昼の光景です。
懐かしい麦踏みです。
今、子供達は「麦踏み」を知らないのではないでしょうか。
「麦は踏まれて強くなる」踏まれても強くなる麦のように育て!などと、昔の人は言われていた事を思い出します。
「げに小春日の のどけしや」実に
ポカポカ陽気の穏やかな日のようです。
そんな陽気に誘われて春に咲く花が間違えて咲いてしまったようです。
3. 嵐吹きて 雲は落ち
時雨降りて 日は暮れぬ
もし燈火の 漏れ来ずば
それと分かじ 野辺の里
3番は夕方から夜になる頃の光景。
急に嵐のように雲が低く垂れ込めたようです。
晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする雨、「時雨」しぐれ。
時の雨なんて素敵な言葉ですね!
夏であれば夕立でしょうか?
雨もすぐ上がり、辺りはすっかり暗くなっていたのでしょう。
暗闇に家の火が灯らなければ、そこが集落だとは分からなかった。暖かい火が灯っている様子や野辺の里の静けさも浮かびます。
日本画の中にありそうな風景が広がっているようにも思います。
大正二年、110年も前の曲なのに歌詞の中の景色が浮かびます。
それは懐かしい風景なのですが、当たり前のように浮かんでくる不思議。
日本の原風景があるのでしょう。
歌っているとその景色の中に自然に溶け込んで一体化するような気がします。
歌詞の繊細な言葉がそうさせるのかも知れません。
美しい日本語。
今一度、歌詞の意味を深く理解してその中に浸ってぜひ歌ってみて下さい。